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Thunderboltとはなんだったのか——「Macの端子」がUSB4時代にも残る理由

Thunderboltとはなんだったのか——「Macの端子」がUSB4時代にも残る理由

Macを使っていると、ときどきUSB-C端子の横に小さな雷マークを見かける。

その正体がThunderboltだ。同じUSB-Cケーブルを挿せるため、一見すると普通のUSBと変わらない。充電もできるし、ディスプレイも接続できる。USB4の登場後は転送速度の差まで小さくなった。

では、Thunderboltは何のために存在しているのだろうか。

かつて必要だった高速規格が、USB-Cに統合された後も名前だけ残っているのか。それとも、USBとは違う役割が今もあるのか。

結論からいえば、Thunderboltとは単なる高速端子ではない。

それは「ノートパソコンを一本のケーブルで外の世界へ拡張する」という構想を先取りした技術であり、現在では「このUSB-Cなら高度な接続が確実にできる」と示す品質保証に近い存在になっている。

ThunderboltはAppleが発明したのか

ThunderboltはMacの技術だと思われがちだ。

無理もない。Thunderboltを搭載した最初の市販コンピュータは、2011年2月に登場したMacBook Proだった。初期のThunderbolt端子は、Appleが以前からMacで採用していたMini DisplayPortと同じ形をしていた。

MacBook Pro、Mac mini、iMacなどに次々と搭載され、Apple自身もThunderbolt Displayを発売した。Macユーザーにとっては身近でも、一般的なWindowsパソコンではあまり見かけない時期が長かった。

しかし、ThunderboltをApple独自規格と呼ぶのは正確ではない。

技術開発の中心はIntelだった。Intel Labsで「一本のケーブルに高速通信と複数のプロトコルをまとめる」という構想が生まれ、2009年に「Light Peak」というコードネームで公開された。その後、Appleと協力して電気信号を使う製品へと仕上げられ、Thunderboltの名称で市場に投入された。

Appleも2011年の発表で、Thunderboltを「IntelとAppleの協力により開発された」技術と説明している。

つまりThunderboltは、Appleが単独で発明したMac専用端子ではない。

Intelが開発し、AppleがMacを通じて世に送り出した高速接続規格だった。

最初のThunderboltは何が画期的だったのか

2011年当時、ノートパソコンの外部接続には用途ごとに異なる端子が使われていた。

USB、FireWire、Ethernet、HDMI、DisplayPortなどが並び、高速な外付けストレージや業務用映像機器には、さらに別の接続方法が必要になることもあった。

そこへ登場した初代Thunderboltは、最大10Gbpsの双方向通信に対応していた。

当時主流だったUSB 2.0の理論上の最大速度は480Mbps。普及が始まったUSB 3.0でも5Gbpsだったため、Thunderboltの10Gbpsは明確に高速だった。

だが、本当に重要だったのは数字だけではない。

Thunderboltは、パソコン内部で拡張カードなどに使われるPCI Expressと、映像出力に使われるDisplayPortを一本のケーブルに通した。これにより、高速ストレージとディスプレイという性質の異なる機器を、同じ端子から接続できた。

複数の機器を数珠つなぎにするデイジーチェーンにも対応した。ディスプレイの先にストレージを接続し、その先に別の周辺機器を接続する、といった使い方も想定されていた。

現在では「ケーブル一本でディスプレイ、ストレージ、ネットワークへ接続する」という発想は珍しくない。しかし、Thunderboltはそれを早い段階で実現しようとした規格だった。

2011年にAppleが発売したThunderbolt Displayは、その思想を分かりやすく形にした製品だ。

MacBookとディスプレイを接続すると、映像だけでなく、ディスプレイ側のカメラ、スピーカー、USB、FireWire 800、Ethernetも利用できた。Appleはこの製品を、MacBookのための「究極のドッキングステーション」と表現している。

Thunderboltが目指していたものは、速いUSBではなかった。

ノートパソコンを机に置き、一本接続するだけでデスクトップ環境へ変えることだったのである。

なぜMacのイメージが強くなったのか

ThunderboltはWindowsパソコンでも利用できる。規格上、Mac専用だった時期はない。

それでもMacの技術という印象が定着した理由は、Appleが初期から一貫して採用したことにある。

当時のThunderbolt対応機器は高価だった。ケーブルにも専用回路が必要で、対応するストレージやドックは主に映像制作、音楽制作、写真編集などのプロ向けに販売された。

一般ユーザーにとっては、USBで十分な場面が多かった。Windowsパソコンのメーカーも、コストをかけて全機種へ搭載する必然性が薄かった。

一方、Macには映像や音楽の制作現場で使われる製品という側面があった。大量のデータを扱う高速ストレージ、オーディオインターフェース、高解像度ディスプレイといったThunderbolt向きの機器を使うユーザーも多い。

Appleは端子を思い切って整理する傾向も強い。複数の専用端子を並べるより、少数の高機能な端子へ集約する思想とThunderboltは相性がよかった。

ThunderboltはMac専用だったからMacで普及したのではない。AppleがThunderboltの思想に合ったコンピュータを作り続けたため、Macの端子として記憶されたのだ。

USB-CによってThunderboltの姿が変わった

大きな転機は、2015年に発表されたThunderbolt 3だった。

Thunderbolt 2まではMini DisplayPort形状の端子を使用していたが、Thunderbolt 3はUSB-Cコネクタを採用した。最大転送速度は40Gbpsとなり、データ転送、映像出力、給電を小さな端子にまとめた。

Intelは当時、Thunderbolt 3を「すべてをこなすUSB-C」と表現している。

これはThunderboltの普及にとって大きな前進だった。同時に、後の混乱を生む出来事でもあった。

USB-Cは端子の形であって、性能を表す名前ではない。

同じUSB-C端子でも、製品によって対応する転送速度は異なる。映像を出力できるものと、できないものがある。パソコンを充電できる端子もあれば、小さな周辺機器にしか給電できない端子もある。

ケーブルにも違いがある。充電はできても高速通信に対応しないケーブルや、映像を送れないケーブルが存在する。

Thunderbolt 3はUSB-Cを採用することで便利になったが、見た目だけでは普通のUSB-Cと区別できなくなった。

ここから雷マークが重要になる。

そのマークは単なる高速通信の印ではない。「このUSB-C端子には、USB以外の高度な機能もまとめて実装されている」と示す目印になったのである。

ThunderboltはUSB4に吸収されたのか

2019年にUSB4が発表されると、Thunderboltの立場はさらに分かりにくくなった。

USB4は、Intelが提供したThunderbolt 3のプロトコル仕様を基礎にしている。USB-IFも公式に、USB4がThunderboltの仕様を土台として、データと映像など複数のプロトコルを同時に扱えるようにしたと説明している。

言い換えると、かつてThunderboltの特徴だった考え方がUSB本体に入ったのである。

初期のUSB4は最大40Gbpsに対応し、その後のUSB4 Version 2.0では最大80Gbpsへ拡張された。速度だけを見るなら、USB4はThunderboltと同じ領域へ到達している。

それなら、ThunderboltはUSB4に吸収され、役目を終えたのだろうか。

技術的には、そう見える部分もある。Thunderboltが先行して実現した高速接続や複数プロトコルの統合は、USB4エコシステムへ広がった。Thunderbolt 3の思想は、特別なプロ向け規格の中に閉じず、USBの次世代仕様に受け継がれた。

ただし、USB4と書かれていれば、すべての製品が同じ機能を持つわけではない。

規格が許容する最大性能と、その製品に実装されている性能は別だからだ。対応速度、映像出力、PCI Expressの扱い、給電能力などは、機器の仕様を個別に確認しなければならない。

Thunderboltが現在も残る理由は、ここにある。

現在のThunderboltは「性能保証」である

現在のThunderboltは、USB4と完全に別の世界を作る規格ではない。

USB-CとUSB4を基盤にしながら、Intelの認証を通じて高い水準の機能や相互運用性を示すブランドという性格が強くなっている。

USB-C端子を見ただけでは、何ができるか分からない。USB4と書かれていても、その最大能力がすべて実装されているとは限らない。

一方、Thunderbolt対応を掲げるパソコンや周辺機器は、世代ごとに定められた要件を満たし、認証試験を受ける。そのため利用者は、端子の細かな実装を一から読み解かなくても、一定以上の接続性能を期待できる。

Thunderbolt 4は、この性格を象徴する世代だった。

最大速度そのものはThunderbolt 3と同じ40Gbpsで、数字だけなら進化がないように見えた。しかし、対応すべき機能や最低要件を整理し、「40Gbpsと書かれているだけでは分からない部分」を保証する方向へ進んだ。

最新のThunderbolt 5では、双方向80Gbpsに対応し、映像通信が多い場面では送信側に最大120Gbpsを割り当てられる。最大240Wの給電や複数の高解像度ディスプレイも想定されている。

もちろん、一般ユーザーの全員がこの性能を必要とするわけではない。

マウスやキーボードを接続し、スマートフォンを充電するだけなら通常のUSBで十分だ。外付けSSDも、用途によっては10Gbps程度で困らない。ディスプレイ一台を接続するためだけに、Thunderbolt対応製品を選ぶ必要がない場合も多い。

Thunderboltの価値が現れるのは、高速ストレージ、複数の高解像度ディスプレイ、外付けドック、映像・音響機器などを一本にまとめたいときだ。

そして、その組み合わせが「理論上は可能」ではなく、「対応製品同士なら動作を期待しやすい」ことに意味がある。

Thunderboltとはなんだったのか

Thunderboltは、USBに敗れた規格ではない。

確かに、当初期待されたように、あらゆるパソコンの標準端子をThunderboltが単独で置き換えたわけではなかった。価格や用途の面で、長くプロ向けという立場から抜け出せなかった。USB-Cの普及後は外見上の独自性も失った。

しかし、その中心的な発想は消えていない。

データ、映像、周辺機器を一本の高速な接続へまとめる。ノートパソコンをケーブル一本で本格的な作業環境へ接続する。必要な帯域を複数の用途で共有する。

これらは現在、USB4の中核的な考え方になっている。

そう考えると、ThunderboltはUSBに負けたのではない。その技術と思想がUSBの中へ溶け込んだのである。

そしてThunderboltという名前は、役割を変えて残った。

かつては「USBより速い未来の端子」だった。現在は「このUSB-Cなら、高度な接続機能を安心して使える」と示す認証の意味合いが強い。

Thunderboltとは、未来の端子そのものではなかったのかもしれない。

それは、一本のケーブルですべてをつなぐ未来を先に見せ、その未来が現実になった後は、複雑になりすぎたUSB-Cへ雷マークという保証を与える存在になった。

Macの横にある小さな雷マークは、過去の独自端子の名残ではない。

USB-Cが同じ形のまま、あまりにも多くの能力を持つようになった時代に、「この一本なら、ここまでできる」と約束するための印なのである。

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