充電しながらスマホを使うと劣化するのか
スマートフォンを充電しながら使うと、バッテリーが劣化する。
そんな話を一度は聞いたことがあるだろう。充電中は触らず、画面を消しておくべきだという人もいる。ゲームをしながら充電すると、バッテリーが急激に傷むともいわれる。
では、充電ケーブルを挿した状態でメッセージを返しただけでも、バッテリーの寿命は縮むのだろうか。
結論からいえば、充電しながら使うという行為自体が、直ちにバッテリーを傷めるわけではない。
問題になるのは、充電による発熱と、ゲームや動画撮影などの高負荷処理による発熱が重なり、端末とバッテリーが高温になることだ。
軽い操作と重いゲームでは、同じ「充電しながら使う」でも条件がまったく違う。
スマートフォンのバッテリーを長持ちさせたいなら、ケーブルが挿さっているかどうかだけを見るのではなく、端末がどれほど熱を持っているかを見る必要がある。
充電中に使っても直ちに壊れない
現在のスマートフォンには、バッテリー管理回路と充電制御ソフトウェアが組み込まれている。
充電器を接続すると、端末は充電器と通信し、対応する電圧や電流を決める。バッテリー残量、温度、端末の消費電力などを監視しながら、充電速度を調整する。
温度が高くなれば充電を遅くし、危険な範囲に近づけば一時停止する。満充電になれば、際限なく電流を流し続けるのではなく、充電を停止する。
Appleは、iPhoneが熱くなりすぎた場合、温度が下がるまで充電を低速化または一時停止すると説明している。ケーブルだけでなく、MagSafeや他のワイヤレス充電器でも同じ保護が働く。
参考:Apple「iPhoneの熱による充電制限について」
https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iph3006fbee4/ios
したがって、充電中に短いメッセージを返す、ウェブページを見る、音楽を再生するといった軽い操作を過度に恐れる必要はない。
ただし、保護機能があることと、どんな使い方でも劣化しないことは別である。
保護機能は、直ちに危険になる温度や状態を避けるための仕組みだ。バッテリーの化学的な老化を完全に止めるものではない。
バッテリーは使わなくても老化する
スマートフォンの多くは、リチウムイオンバッテリーを使っている。
充電して繰り返し利用できるが、永久に同じ容量を保てるわけではない。充放電を重ねるサイクル劣化と、時間の経過だけでも進む保存劣化がある。
新品時に一日使えたスマートフォンが、数年後には夕方で残量不足になるのは、内部で電気を蓄えられる量が少しずつ減るためだ。
Googleも、リチウムイオンバッテリーは消耗品であり、温度、充放電、端末の利用状況など多くの要因で容量が低下すると説明している。
参考:Google「Understand your Pixel battery」
https://support.google.com/pixelphone/answer/15738128
この老化を早める主要因の一つが高温である。
温度が高いほど、バッテリー内部の望ましくない化学反応が進みやすくなる。短時間熱くなっただけで突然使えなくなるわけではないが、高温状態を繰り返せば、長期的な容量低下につながる。
さらに、充電率が高い状態もバッテリーには負担となる。特に、高温と100%に近い充電率が長く重なる状態は、寿命の面で不利になる。
なぜ充電すると熱くなるのか
充電器から入った電力のすべてが、そのままバッテリーへ蓄えられるわけではない。
電圧を変換し、充電電流を制御し、バッテリー内部で化学エネルギーへ変える過程には損失がある。その一部が熱になる。
急速充電では短い時間に大きな電力を扱うため、端末や充電器が温かくなりやすい。バッテリー残量が少ない前半は速く充電し、満充電へ近づくと電流を下げるのも、発熱や負担を抑えるためである。
Appleは、バッテリーがフル充電に近づくと充電電流を徐々に減らし、推奨温度を超えた場合には80%以上の充電を制限することがあると案内している。
参考:Apple「iPhoneのバッテリーを充電および節約する」
https://support.apple.com/ja-jp/105105
普通に充電しているだけでも多少の熱は出る。そこへスマートフォンの使用による発熱が加わると、温度が上がりやすくなる。
スマホを使うことでも熱は生まれる
スマートフォンは、小さなコンピュータである。
ゲームではCPUとGPUが動き、画面を高い明るさや高いリフレッシュレートで表示する。動画撮影では、カメラセンサーから大量のデータを読み出し、映像を圧縮して保存する。ナビゲーションでは画面、GPS、モバイル通信を同時に使う。
これらの処理では電力を消費し、その一部が熱へ変わる。
Googleは、ゲーム、動画、高精細動画の撮影、テザリング、大量の通信などでPixelが温かくなり、それらを充電中に行うとさらに熱くなり得ると説明している。温度が上がると、CPU性能や充電速度を制限し、カメラや通信機能を停止する場合もある。
参考:Google「Help keep your Pixel phone from feeling too warm or hot」
https://support.google.com/pixelphone/answer/3333708
つまり、ゲームをしながら充電する場合、端末の中では二種類の仕事が同時に行われる。
一つは、スマートフォンを動かす仕事。もう一つは、バッテリーへ電力を蓄える仕事だ。
両方が発熱するため、何も操作せず充電するときより温度が上がりやすい。
軽い操作とゲームは同じではない
「充電中にスマホを使う」という言葉は、条件が広すぎる。
画面を数十秒点灯して通知を確認することと、最大画質の3Dゲームを一時間続けることを、同じ危険度として扱うことはできない。
軽い操作なら端末の消費電力は小さく、発熱も比較的少ない。適切な室温で、端末が熱くなっていなければ、実用上大きな問題になる可能性は低い。
一方、次の条件が重なると熱がこもりやすい。
- 高負荷の3Dゲームを長時間続ける
- 高画質動画を撮影または配信する
- 画面輝度を最大にする
- 5G通信やテザリングを使う
- 急速充電またはワイヤレス充電を行う
- 厚いケースを装着する
- 直射日光の下や暑い車内で使う
充電中の使用を一律に禁止するより、端末温度と負荷を確認する方が合理的である。
「過充電になる」は誤解
充電しながら使うと、100%を超えて電気が入り続け、過充電になると思われることがある。
通常の状態で、現在のスマートフォンが100%を超えて際限なく充電されることはない。充電制御回路が上限電圧を管理し、満充電になれば充電を止める。
Appleも、iPhoneはフル充電されると自動的に充電を停止するため、一晩中充電器へ接続していても安全だとしている。
参考:Apple「iPhoneのバッテリーを充電および節約する」
https://support.apple.com/ja-jp/105105
ただし、「過充電にならない」と「バッテリー寿命に最適」は同じではない。
100%付近ではバッテリーの電圧が高い。満充電状態で高温のまま長時間維持すれば、危険な過充電ではなくても、化学的な老化には不利になる。
このため、近年のスマートフォンには充電上限や充電最適化機能がある。
たとえばiPhoneでは、80%などの上限を設定できる機種がある。Appleは、頻繁に充電したり長時間接続したままにしたりする場合、上限設定によってバッテリーの消耗を抑えられると説明している。
参考:Apple「iPhoneで充電上限を設定する」
https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iph0777c60aa/ios
充電中なのに残量が増えない理由
充電器を接続したとき、入ってくる電力はスマートフォンの動作とバッテリー充電の両方に使われる。
仮に充電器から20Wが端末へ届き、スマートフォンの動作に5Wを使うなら、残りを充電へ回せる。ただし変換損失もあるため、単純に15Wすべてが蓄えられるわけではない。
ゲームなどで端末が15W以上を消費すれば、充電に回せる電力は小さくなる。充電速度が遅くなり、残量がほとんど増えないこともある。
充電器の供給能力より端末の消費電力が大きければ、ケーブルを挿しているのにバッテリー残量が減る場合さえある。
Googleも、Pixelは充電中に使用できるが、速く充電したい場合は使用を控えるよう案内している。
参考:Google「Charge your Pixel phone」
https://support.google.com/pixelphone/answer/7106961
これは故障とは限らない。入ってくる電力より、スマートフォンが使う電力の方が多いだけである。
ワイヤレス充電しながら使う場合
ワイヤレス充電は、充電器とスマートフォン内部のコイルを使い、磁界を介して電力を渡す。
有線充電より変換段階が増え、位置ずれによる損失もある。そのため、条件によっては有線より発熱しやすい。
平置き型の充電器なら、充電しながら手に持って操作しにくい。MagSafeのような磁気吸着式では持ち上げて使えるが、充電器自体が背面に付き、放熱を妨げることもある。
ワイヤレス充電中にゲームを続け、端末が明らかに熱くなるなら、充電を中止するか有線へ切り替えた方がよい。
ケースを外し、コイル位置を正しく合わせることも、無駄な発熱を抑える助けになる。
給電分離という考え方
ゲーム向けスマートフォンなどには、バッテリーを充電せず、充電器からの電力を端末の動作へ優先的に使う機能がある。
給電分離、バイパス充電、充電一時停止などと呼ばれる。
Sony XperiaのHeat Suppression power controlは、ゲーム中に充電ケーブルを接続すると、バッテリーを充電せず、端末システムへ直接給電する。Sonyは、熱による負担を減らし、ゲーム性能とバッテリー寿命の維持に役立つと説明している。
参考:Sony「What is Heat Suppression power control and how to use it?」
https://www.sony.com/electronics/support/articles/00264201
一部のGalaxyにも、ゲーム中にUSB PD充電を一時停止し、端末への給電を優先する機能がある。Samsungは、発熱を抑えてバッテリーを保護する目的を示している。
参考:Samsung「Pause USB PD charging when gaming feature on your Galaxy device」
https://www.samsung.com/ie/support/apps-services/pause-usb-pd-power-delivery-charging-when-gaming-feature-on-your-galaxy-device/
この機能の存在自体が、悪いのは「電源につないで使うこと」ではなく、「バッテリーを充電しながら高負荷処理を行い、熱を重ねること」だと示している。
給電分離があれば、コンセントの電力でゲームを動かしながら、バッテリーへの充電と発熱を抑えられる。
バッテリーを長持ちさせる現実的な使い方
バッテリーを守るため、充電中は一切触らないという生活をする必要はない。
次のような使い分けで十分現実的である。
- メッセージやウェブ閲覧など、軽い操作は気にしすぎない
- 端末が熱くなったら重いアプリと充電を止める
- ゲーム中は画質、フレームレート、画面輝度を下げる
- 直射日光や高温の車内で充電しない
- 熱がこもる場合はケースを外す
- ゲーム対応機では給電分離を使う
- 長時間接続するなら80%前後の充電上限を利用する
- 急ぐ必要がなければ、発熱の少ない充電方法を選ぶ
AppleはiPhoneを0~35℃の環境で充電し、充電中に熱くなる場合はケースを外すよう案内している。
参考:Apple「iPhoneの熱による充電制限について」
https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iph3006fbee4/ios
温度警告や充電保留が表示された場合は、保護機能が働くほど温度が上がっている。充電器を外し、涼しい場所で温度が下がるのを待つべきである。
充電しながらスマホを使うと劣化するのか
充電しながら使うこと自体が、バッテリー劣化の直接的なスイッチになるわけではない。
短時間の軽い操作で端末が熱を持っていないなら、大きく心配する必要はない。スマートフォンも温度と充電状態を監視し、必要に応じて速度を下げる。
注意すべきなのは、充電、高負荷処理、高い画面輝度、無線通信、高い室温などが重なり、端末が長時間熱くなる使い方である。
特に、100%に近い状態で熱を持ったままゲームを続けることは、バッテリー寿命の面で好ましくない。
つまり、悪いのは充電ケーブルを挿したまま画面に触ることではない。
電力を蓄える発熱と、電力を使う発熱を、同じ小さな筐体の中で重ねることだ。
バッテリーを守る最も分かりやすい目安は、「充電中に使ったか」ではなく、「端末が熱いまま使い続けたか」なのである。